ひと押しずつ、模様になる。ジャイプールのブロックプリント
Faburs
地域の工程資料を手がかりに、木版から布へ模様が移る仕組みをたどります。
ブロックプリントとは、模様を彫った木版に色材をつけ、布に押して柄を写す技法です。多色の模様では、輪郭や色面に応じて版を分け、位置を合わせながら重ねていきます。ひとつの版を隣へ、さらに隣へ。その繰り返しが、一枚の布の模様になります。ABURY Foundation「Craft Haven: Printing in Sanganer」
ジャイプールの周辺には、サンガネールやバグルーなど、布のプリントで知られる地域があります。ここでは地域の工程資料を手がかりに、木版から布へ模様が移る仕組みをたどります。
木版には、布に写したい線が残されている
木版は、ただ模様を描いた木の板ではありません。布に触れる部分を残し、その周囲を彫り下げた道具です。残された面に色材がつき、押したときに布へ移ります。
ジャイプールのANOKHIが紹介する木版づくりでは、木の表面を平らに整え、図案を写し、手道具で彫り進めます。細い茎も、花びらの隙間も、布の上に現れる前に木の上で形になっています。ANOKHI「Craftsmanship & ANOKHI」
ジャイプールのプリント用木版。彫り残した面と、その周囲の溝が見える。写真:Swapnil.Karambelkar/Wikimedia Commons/**CC BY-SA 4.0
ひとつの花を、複数の版に分ける
たとえば、輪郭のある花に赤と緑を入れる場合。輪郭を表す版、花びらの色面を表す版、葉の色面を表す版というように、図案を役割ごとに分けて考えます。
ラージャスターン州の工芸資料でも、輪郭、模様の内部、背景を受け持つ版が紹介されています。同じ花を別々の版で描き足していくため、それぞれの版がどこに重なるかまで含めて設計する必要があります。見えている色数だけで、使った木版の数を言い切ることはできません。ラージャスターン州「Block Making」
押す前に布を整え、押すたびに位置を合わせる
模様をつける前には、布を洗って糊や汚れを落とし、作業台の上でしわやたるみが出ないように整えます。サンガネールの工程を記録したD’Sourceの資料には、布を固定し、目印をつけてからプリントする様子が紹介されています。
位置合わせには、二つの仕事があります。ひとつは、同じ版を横へ送って柄を繰り返すこと。もうひとつは、別の色の版を、先に押した模様に合わせることです。花と花の間隔を保ちながら、花の中では輪郭と色面を合わせる。広い布の上で、この作業を繰り返します。D’Source/NID Bengaluru「Block Printing — Sanganer: Making Process」
ジャイプール近郊・バグルーでの作業風景。T写真:Anildiggiwal/Wikimedia Commons/**CC0 1.0
模様がついたあとにも、仕上げがある
プリントを終えた布は、使う色材に適した定着や洗浄、乾燥などの工程へ進みます。D’Sourceが記録したサンガネールの例では、乾燥後に蒸し、水洗い、乾燥、アイロンがけが続きます。ただし、染料や技法が変われば仕上げ方も変わるため、これがすべてのブロックプリントに共通する手順ではありません。D’Sourceの工程記録
また、木版で押した布だからといって、必ず天然染料で染めているわけではありません。「どう模様をつけたか」と「何で色をつけたか」は、別の情報です。ABURY Foundationの技法紹介
ポーチの柄を、少し近くで見てみる
Tantuのツールポーチには、ジャイプールのブロックプリントコットンを使っています。青い柄の写真を、花のまとまりひとつ分まで近づいて見てみましょう。
青い背景、葉の色面、細い輪郭を見比べられるツールポーチのアップ。画像:Faburs商品ページ
まず、赤い花と黄緑色の葉がひとまとまりになって、隣にも繰り返されていること。その次に、葉の色面と、葉脈や外側を描く細い線を見ます。色の面と輪郭を分けて見ると、複数の版がひとつの柄をつくる仕組みを想像しやすくなります。
さらに、布を縦に走る縫い目にも注目してください。縫い目による凹凸と、プリントされた線は別のものです。濃淡を見つけたときも、印刷の差なのか、布の凹凸にできた影なのかを見比べると、写真から読み取れることが増えます。
商品には柄の出方やかすれ、ずれ、色の濃淡に個体差があります。ただし、写真だけで版の数や押した順番を特定することはできません。実物を手にしたら、隣り合う同じ花を二つ選んでみてください。同じ図案の繰り返しの中にも、ひと押しごとの違いを探す楽しみがあります。
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